家、家にあらず
同心の娘・瑞江は、亡き母につながるおば様・浦尾の勧めで、砥部家の奥御殿につとめ始めた。 女たちの強烈な確執のなか、不可解な事件が起こる。 一方人気歌舞伎役者の心中死体が見つかる。その相手は砥部家に関わりのある者だった。 瑞江の父は娘を案ずる… 松井さんは137回直木賞の受賞作家さんです。 この「家、家にあらず」は受賞作ではないのですが、ネッ友さんが読んでおられて 面白そうだったので、手にとってみました。 大奥好きの方は面白いと思いますよー。 大名家でも奥はあったんですね。いやはやもうちょっと質素なのかと思えば 役者を呼んだりと豪華だったのですね。 江戸の八丁堀で育った瑞江が、この大名家の奥に入り戸惑い矛盾を感じながらも 一生懸命に日々をこなしていく姿は、好感が持てます。 瑞江を引き寄せた当の浦尾の冷ややかなこと。だけどそれが御年寄なのですよね。 女であることを半ば捨て、家に仕えるということは早々できたことじゃないことなのかもしれないですね。 終わりに近づくにつれ、瑞江にも変化が生まれてきてるところが奥に勤める女になってきている ということなのでしょうね。 江戸庶民の話も面白いのですが、こういう大名家の話も面白いです。 最近読みたい本のベクトルが、こうい時代モノや歴史モノに向いてます。 秋がやってくるからでしょうか。 読書の秋となればいいですね〜。 |
名もなき毒
どこにいたって、怖いものや汚いものには遭遇する。それが生きることだ。財閥企業で社内報を編集する杉村三郎は、トラブルを起こした女性アシスタントの身上調査のため、私立探偵・北見のもとを訪れる。そこで出会ったのは、連続無差別毒殺事件で祖父を亡くしたという女子高生だった。 「誰か」の続編です。今回はタイトル通り「毒」がテーマ。 連続無差別毒殺事件の「毒」、土壌汚染の「毒」、シックハウス症候群の「毒」 そして人の心に潜む「毒」。 命にかかわる「毒」ももちろん怖いのですが、人の心に巣くう「毒」もまた怖ろしい。 トラブルメーカーの原田さん…こんな人がまわりにいたらどれだけ汚染されてしまうことだろう。 実際いなさそうでいるんだろうな。 |
くちぶえ番長
小学四年生のツヨシのクラスに、一輪車とくちぶえの上手な女の子、マコトがやってきた。 転校早々「わたし、この学校の番長になる!」と宣言したマコトに、みんなはびっくり。 でも、小さい頃にお父さんを亡くしたマコトは、誰よりも強く、優しく、友だち思いで、 頼りになるやつだったんだ―。 雑誌「小学四年生」に掲載されたものに、書き下ろしを加え文庫されたそうです。 夏休みの宿題の読書感想文に頭を抱えていた娘に、「読め」と差し出したのがこの本。 嫌々読み始めていたのに、いつのまにか入り込んでいる。 そして無事に感想文を書き終えたようです。 私が薦めた本を読み終えることは、めずらしい。 娘が読んでいる合間に、私も読んでみる。小学生にむけられたものだけど、やっぱキュンと きてしまった。 登場人物たちがかわいくてどこかなつかしく、生き生きと走り回ってるのです。 最初は自分がいじめられてしまうんじゃないかと弱い者いじめを見て見ぬふりをしていた ツヨシも、マコトに影響され強い男の子になっていくんです。 マコトは明るく正義感あふれる女の子なんですが、家庭の事情を抱えていて自由に 遊ぶことができないのですが、不満なんて感じさせないんです。 それだけ家族が大好きなんでしょうね。 マコトとツヨシのお父さん同士も幼馴染で、そのへんもキュンとさせられてしまうんです。 小学生向けとはいえ、やはり重松さんだなぁ… いつも言うのですが重松さんはリアルなところがあって、グサリとやられてしまい 苦手なところがあるんです。 家族が抱えるリアルな問題(いじめとか、死とか)が、痛いんです。 でもそろそろ読みたい頃。この本を手始めに読んでいこうかな。 |
図説江戸東京怪異百物語
妖怪モノが好きでして、図書館でちょっと目についたので借りてみました。 もっとおどろおどろして怖い妖怪が出てくるのかと思ったら、結構笑える。 例えば大きな足が天井からぬっと出てきて、足を洗わないと戻ってくれない妖怪とか。 絵を見るだけで笑えます。 息子が気に入ってしまい、これはなにか?と聞いてくるもんだから全部説明してあげました。 そして二人で大笑い。 中でも彼が気に入ったのは「番町皿屋敷」 「いちま〜い、にま〜い」と数えてます。 夜寝れんようになるよ!と言ったのに熟睡してました。 狸や狐にばかされたといったことも多く信じられていたんですね。 今じゃ狸も狐も追いやられてしまってかわいそうな世の中になってしまいましたね。 この本じゃちょっと物足りないので、妖怪本をまた探してみようっと。 |
こころ
高校の頃に教科書に載ってた「こころ」を読み返してみる。 恋人を得るために親友を裏切り、自殺へと追いこんだ。その過去の罪悪感に苦しみ、自らもまた死を選ぶ… 私が「先生」と出会うのは鎌倉の海。師と仰ぎ「先生」に入れ込んでいく私。 高校生の頃は「先生」と私の関係がいまいちわからなかったのですが、こっこれは今でいうBL? こんな昔から…と思うがよく考えれば戦国の世も武将はお小姓に手をつけてたり 家光だって女に興味がなかったではないか。 別段不思議なものではなかったのかもしれない。 そんなことはさておき、インテリとは難儀なものですね。 「先生」が犯した過ちは、今の若者には理解しがたいものでしょう。 Kにはっきりと言えばよかったものを、なぜに? Kもなぜに死ぬ?生きておればよかったものを。 そうかと思えば遺産相続など現実味あるところも。 人間不信になるのは理解できるけど。 父親の死より「先生」を選んだ私の行く末も気になるところです。 彼も悲観して後を追ってしまうのでしょうか。 集英社文庫で読んだのですが、吉永みち子さんの「鑑賞」が面白かった。 教科書からこういった古典がはずされていくのは、時代背景が今の高校生に理解できない という理由だという話題を耳にしたのだけど、そうなのかもしれないなぁと思ってしまった。 でもこういう時代もあったんだってことは、教科書で教えてくれてもいいんじゃないかしら。 |
黒い雨
広島で被爆した重松夫妻と姪の矢須子。戦後、矢須子が縁遠いのは、原爆にあったからだという 噂のせいだと思った重松は、自分の被爆日記を見せようと清書を始める。 今年はある政治家の「原爆はしょうがない」発言のせいか、戦争がテーマとなった テレビ番組が多かった。 はじめて戦争のことを考えさせられた子供たちもいたのではないでしょうか。 私は広島に生まれ育ったせいか、小学生の頃にはたびたび平和学習をしていました。 原爆の怖ろしさも身近に聞くこともできました。 しかし自分の子供達は、学校での平和学習なんてほとんどないです。 語っていく人も高齢となり、難しいのかもしれないです。 アメリカでは、原爆投下は正当化されています。 ただ多くの人はこの悲惨な実情を知らないのだそうです。 アメリカでも今年テレビ番組で大きくとりあげられたというニュースを見ました。 この番組を見たあとでは、多くの人の考えが変わったそうです。 「黒い雨」を手にとろうと思ったのも、私の中でなにか考えさせられたからかもしれません。 主人公である重松が原爆にあい焦土の広島の街を歩き、市外の勤め先の工場に身を寄せ それからも広島の街に入り、悲惨な実情を目の当たりにする様子が語られています。 今の私達には考えられない距離を歩き回ってます。 交通機関もなくただ歩き続ける、しかも阿鼻叫喚の地獄の中を。 知っている地名に胸が痛む思いでした。 昨日までは普通に暮らしてきたはずなのに、どうしてこんなことが起こってしまったのか。 たったひとつの爆弾が、人生を変えてしまったのです。 戦後も原爆症に苦しみ、いつ死が訪れるかもしれない恐怖、それでも生きていかなければいけないのです。 とてもじゃないが「しょうがない」なんて言えたもんじゃない。 戦争が二度と起こらないためにも、子供達に伝えていかなければいけないですね。 同じように日本が他国に行った行為も、知らなければいけないし伝えなければいけないと思います。 そういう私もじつは広島の原爆のことは知っていても、長崎のことはよく知らないんですよね。 戦争を知らない世代のほうが多いんですもんね… 小さなことから始めていけたらと思ってます。 |
FUTON
日本文学を研究するデイブ・マッコーリーは、教え子である日系の学生エミを追いかけて、 学会に出席するという名目で東京に行く。 エミの祖父の店「ラブウェイ・鶉町店」で待ち伏せするうちに、曾祖父のウメキチを 介護する画家のイズミと知り合う… デイブが研究しているのは田山花袋の『蒲団』 この主人公である小説家・竹中時雄は、若い女学生芳子を家に下宿させるのですが 芳子には想い人が現れ、すったもんだのあげく郷里に帰ってしまい、芳子の使っていた 蒲団に顔をうずめて泣く話だそうです。 それをデイブが妻の視線から書き直しているというのですが、竹中とデイブが重なるんですよ。 若い女の子に振り回される中年男。 でもいやらしくなく、微笑ましいくらい。みっともなさがかわいらしく感じてしまいます。 エミの曽祖父のウメキチの嘘かまことかの話も、面白い。 実際に現実を生きているのか幻想の中で暮らしてるのか。 でも確かに生きているんですよね。 中島さんらしいゆるい日常が、なんともいえません。 デイブにもウメキチにも幸せが訪れますように。 女どもは勝手に幸せをつかんでいくんだろうな。 『蒲団』も機会があれば読んでみたいけど、読まないだろうなぁ。 きっとデイブ版のほうが、気持ち的にも楽しめるものだものね。 |
悪人
福岡の三瀬峠で保険外交員石橋佳乃の遺体が発見される。 同僚の前では彼氏と思われる人物と待ち合わせをしていたはずだが、その夜約束していたのは 長崎に住む土木作業員加害者清水祐一だった… あわわー、これは久々にズシッとくる本でした。 「悪人」とタイトルが銘打ってあるのに、悪人がなかなか出てこない。 佳乃を殺したのかと思われる人物、清水祐一は朴訥で無口で母親に捨てられ祖父母に育てられ その老いた祖父母達の面倒を見、ただの車好きの青年なのです。 こんな人付き合いが苦手なような青年がなぜ…なんだか直視していられない気分。 かえって殺された佳乃、彼女の想い人増尾のほうが悪人。 ただこれぐらいの人間はごまんといるだろうから、悪人とは言えないのですが。 しかし何がすごいかっていうと、佳乃、祐一を取り巻く人々の綿密さ。 彼らの背景が詳しく語られれば語られるほど、佳乃、祐一たちの違う側面が浮き彫りになってくる。 両親から見れば殺された佳乃は愛しい存在だが、まわりから見た彼女は違う。 視点が変われば違ってしまう。痛々しいくらいに。 祐一の「どっちも被害者になれん」ってのが、心に刺さります。 ただ自分なら見ず知らずの人に会おうともついて行こうとも思わないのですが… でも自分が被害者にも加害者にもならないとは言えないです… |
たぶん最後の御挨拶
東野さんのエッセイです。だけどタイトル通りこれが最後なのかもしれないです。 私はエッセイが苦手なところがあるのですが、東野さんのは面白い。 ホントはもっと書いて欲しいな。残念。 デビューに至るまでとか、売れない時代のことも色々。 東野さんでも苦労してたんですね。今の勢いじゃ考えられない。 映画化された作品のことも、書かれてます。 きらびやかな女優さんにクラクラしてる姿が目に浮かぶ。フフフ。 私の母も映画「手紙」を観て、いたく感動してました。 テレビで話題になった映画をやるたびに、「手紙」のほうがよかったとなぜか比べてます。 原作を読んだらどう思うのか… それにしても既読作品のタイトルが並んでいても、すぐに思い出せない… むーっ、記憶力の低下が…いやはや。 これからも新刊が出るたびに気になるんだろうな。読んでないのも多いなー。 「天空の峰」は読まんといかんな。 これからも楽しみにしてます、東野さん。エッセイも読みたいです。 |
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