白楼夢
![]() 白楼夢―海峡植民地にて
livedoor BOOKS 書評/ミステリ・サスペンス ![]() ![]() 1920年代、英国植民地シンガポール。大物華僑の娘、呂白蘭の死体を発見したことから、 日本人青年・林田は殺人の嫌疑をかけられ、警察と呂一族の双方から追われることになる… この時代では、一旗あげようとした日本人がゴム園などの事業を起こしにシンガポールに やってきていたようです。 林田も同じようになにかを始めたいとやってくるのですが、日本での学生時代の友人が この地の大物架橋の息子で、それが理由で日本人たちから一目置かれる存在となるのです。 もちろん先にシンガポールにやってきている日本人たちは海千山千をこなしてきた者たちばかり。 林田がどうやって渡り合っていくのか、これが面白いんですよ。 サクセスストーリーですな。映画みたい。 冒頭で大物架橋の娘であり、友人の妹である白蘭の死体を発見するのですが、ここではまだ 白蘭との関係はわからないのです。 この事件と林田のシンガポールでの出来事とが交互に語られ、謎を深めてるのです。 信頼を勝ち得ていたはずの林田がナゼはめられたのか… 色々な要素で楽しめました。 舞台が大正の頃でレトロでモダンな雰囲気で、一昔前の日本映画のようでした。 勝気でわがままな白蘭タイプって、この手の映画のヒロインにピッタリです。 この地に娼婦として連れてこられている日本人の耐えている姿と対照的です。 こういう時代があったことを知るいいミステリでした。 |
神田川デイズ
豊島さん初読みです。 以前から評判のいい豊島さん、だけど高校生モノなんだよねとなぜか手にとらず、 「神田川デイズ」は大学生の話というのでようやく手にしたのでした。 東京にあるとある大学が舞台。 2部があったり、学部も多そうで大きな有名大学だと思われる。 連作短編となっていて、いずれの主人公も冴えない大学生活を送っている。 地方からでてきて、大学生になればなにかが変わると願っているけど実際は そうでもなくモンモンとすごしているのです。 あぁそれぞれにこうやって悩んで、はじけていくんだよね。 微妙に登場人物がリンクしていて、あっこの二人付き合うことになったのね。などと微笑ましい。 そう微笑ましいのよね、皆。 だけど星子ちゃんだけは最初と最後の印象がかなり違ってくる。 なにも苦労のないかわいらしい子と思っていたのに。 彼女はこれからも応援したい人物ですね。 |
メタボラ
沖縄の森をなにかから逃げる男。 しかし何から逃げているのか、自分は誰なのかここがどこなのかさえもわからない。 記憶を失った男が出会ったのは昭光という宮古島出身の男。 昭光もまたとある施設から逃げてきたところだった。 昭光から男は「銀次」という名前をつけてもらうことに。 男たちはコンビニ店員に救われ、彼女のアパートに行くのだが… 男が主人公のせいかいつものようなドロっとしたとこがあまり感じないような気がしました。 沖縄が舞台ということで、緩やかなのかな。 でも転がっていくようなこの男達の運命にひきつけられる。 それにしてもこういう生き方をしている人たちが結構いらっしゃるのですね。 私が若い頃はバブルの名残りが残っている頃で、ブランド志向が強かったような気がします。 でも生活できればいいって感じなんですよね、ここに登場してくる人たちって。 根の生えた生活をしようとすればしがらみが生じてくる。どっちがいいものか。 なんか羨ましいような、かといって自分の子供達がこうなってしまうとなると やめて〜と思ってしまったり(笑) ギンジの過去は、悲惨なはずなのにあまり悲惨に感じなかったのですが、どうでしょうか? どこかギンジの人の良さを感じてしまったからなのでしょうか? ムムムー。どん底に落とされてなにがなんだかわからなくなる桐野ワールド中毒に なってるのかしら、私。 ちょっと物足りなさも感じながら、メタボラはメタボラで面白かったと思うのでした。 |
少女監禁
小倉と新潟で起こった少女監禁事件。 小倉の事件は一家連続殺人事件とも繋がっていった。 松永太と緒方純子によって監禁されていた少女が発見された。 少女は、自分の父も監禁され殺されたと話す。 暴力や電気ショックで虐待され父親を見殺しにしなければいけなかった少女… おまえも共犯だと吹き込まれ、逃げることもできなかった。 しかし事件はそれだけではなかった。主犯格の緒方の家族も犠牲となっていた。 本当に起こった事件とは思えないほど凄惨です。 家族が家族を殺しあっていく。一人の男に翻弄されて。 松永と緒方は実質夫婦なのですが、やはり緒方も松永に支配されているんですよね。 逮捕されてようやく解放されたのかもしれないです。 しかし酷い。怖ろしい。 新潟の事件は小学4年生の少女が下校途中に男にさらわれ、男の自宅2階に 9年2ヶ月も監禁されるという事件。 しかも歩き回ることすら許されず、マットレスの上だけでの生活。 食事もろくに与えられず発見されたときは、歩くこともできなかった… 4年生ですよ!たくさんの楽しい思い出をつくるはずだったのに。 それを奪ってしまった犯人。まったくもって身勝手としかいいようがない。 一緒に犯人の母親が暮らしていたのだけど、9年もの間気付かなかったそうだ。 そこまでして存在を消されていた少女が不憫でならない。 どちらの事件もこれほどまでに恐怖は人を支配してしまうのですね。 逃げることはできたのかもしれない。だけどまた引き戻されるかもしれないという呪縛。 なによりも怖ろしいのは、本当に起こった事件だということ。 世の中で一番怖ろしいのは生きている人間ということなのですね… 2件とも別の著者が書いたノンフィクション本が出ているので機会があれば読んでみよう。 |
カカオ80%の夏
女子高生の凪は、クラスメートの雪絵の服を買うのに付き合う。 しかし雪絵は夏休みに入ってすぐに、書置きを残し行方不明になってしまう。 雪絵の母から問われたことから凪は雪絵を探すことにする… 理論社のミステリーYA!シリーズです。 いつもの永井さんは大人の女性が主人公なのですが、今回はYAということもあり女子高生。 これがなかなかイケてる。 凪はちょっとクールな女の子で一匹狼的なところもあり、女の子が憧れる女の子では。 ナンパな男の子に絡まれても、上手く対処してるんですよね。 ボディガードのような外人の知り合いもいてかっこいいんだわ。 こういう魅力的な主人公なので、テンポよい話も面白かったです。 出来すぎなとこもあるけど、それはそれでよし。中高生向きの本でもあるし。 いつもの永井さんらしく人の嫌な部分もちょっと見せてくれてます。 おばあちゃん方がいいわー。 このミステリYA!シリーズは執筆陣が豪華ですね。 これから刊行予定を見ているだけでも楽しみになってきます。 |
青空のむこう
交通事故で不意に死んでしまったハリー少年。気がつけば”死者の国”の受付にいた。 150年前に死んだアーサーと出会うが、アーサーは顔も知らない母を捜している。 皆”彼方の青い世界”に向かうのに、なにか心残りがある者は”死者の国”に留まってしまうのだ。 ハリーにも心残りがあった。 事故にあう前に姉のエギーとケンカしたこと。 ハリーはアーサーに連れられて”生者の国”に向かう… この手の本は泣いてしまうだろうな。と思ったらホントに泣いてしまいました。 でも決してハリー少年が悲観的ではないのです。 死んだことを悔やんではいるのですが、でも受け入れてるんですよね。 こういうのって宗教の違いなんですかね? 死後の世界についても、なんだか違うなと思って。 仏教だと極楽と地獄にわかれるじゃないですか、他の宗教ってどうなんだろ。 自分が死んだあと周りの人はどう思っているのか… ハリーがいなくても日常は動いている。友達も前に向かってる。 わかってはいても、一抹の淋しさを感じるハリー。 だけど天敵と思っていたヤツの本当の気持ちを知り、ハリーも本当の自分の気持ちに気付く。 そして家族のもとに… |
なみだ研究所へようこそ!
メンタル・クリニック<なみだ研究所>で働くことになった臨床心理士の松本。 しかし所長の波田煌子は幼い容姿、貧相な知識にトボけた会話で松本は調子を狂わされる。 伝説のセラピスト波田煌子の診療とはいかに! 専門家から見れば、そんな…というような<なみだ研究所>。 しかし設定はさておき、煌子と松本、もう一人の所員(会計士)の小野寺の3人のやりとりが面白い。 煌子のおとぼけぶりにキリキリ舞いさせられてるのです。 そうはいえクライエントの前で、そんなに異論を唱えていいものなのか〜。 最後の話はちょっぴりホロっとしますが、これからのそれぞれの活躍に期待できますね。 煌子には新たな話があるようなので、こちらも読んでみようと思います。 |
いつか、僕らの途中で
山梨で先生をしている彼と京都で大学院に通う彼女の手紙のやりとり。 手紙だけなのに、彼と彼女は同じ大学に行ってたのかなとか恋人というにはちょっと 固い文章だよなとか二人の関係をいろいろ想像してしまう。 でもステキな手紙。四季のことが添えられていて、同じように桜を見、夏の暑さを感じ、 艶やかな紅葉を楽しみ、冬の寒さに凍える。 たぶん携帯は持っているだろうけど、メールではなく手紙っていうのがいいんですよね。 届くと嬉しいし。 図書館でこの本に惹かれたのは、まずはイラスト。 こういうタッチのイラストは好きなんですよ。 柴崎さんも前から気になっていた作家さん。 他の作品もぜひ読んでみようと思ってます。 大原三千院の障子見てみたいな。どんな虹なんだろう… |
パパとムスメの7日間
イマドキの女子高生・小梅16歳と、冴えないサラリーマンのパパ47歳。 偶然巻き込まれた電車事故によって二人の体と心が入れ替わる。 「大キライなパパ」になってしまった小梅と「最愛の娘」になってしまったパパ。 二人は入れ替わったまま、それぞれの難局を乗りきる為に会社へ学校へ通うことにする… 今までに入れ替わるという話はよくあったと思うのですが、意外や意外面白かったです。 小梅の気持ちとパパの気持ちがそれぞれに思わぬところをついていてリアルなんですよね。 ムスメの憧れのケンタ先輩とデートしなければならなくなってしまったパパ、 好感を持てるのにそれを認めたくないとアタフタしたり。 小梅は小梅でパパの会社で社会人としての矛盾を感じたり。 お互い入れ替わった体や立場で戸惑う姿には、正直笑えます。 確かに父親に自分の体を触られたり見られたりしたくないですよね。 でもそれぞれがパパ、ムスメのために奮闘してる姿はやっぱり家族なんだよねと好感が持てます。 決して逆転満塁ホームランとはいえないけど、いい方向に向かってる終わり方が好きです。 |
まんまこと
江戸は神田。玄関で揉めごとの裁定をする町名主の家に生まれた麻之助は、たいそうなお気楽もの。 支配町から上がってくる奇問に幼馴染の色男・清十郎、同心見習の吉五郎と取り組むが… しゃばけシリーズが好きな私にはちと物足りないかも。 というのも登場人物のキャラがしゃばけシリーズに比べると地味(?)。 主人公はお気楽な名主の跡取り息子麻之助なのですが、お気楽というほどお気楽ではないような… 実際に事件に駆け回ってるではないか。もっとお気楽ぶりを発揮してほしかった。 でも話は面白かったです。どこかほっとする終わり方で、宮部さんの時代モノっぽいですね。 奇妙な縁となったお寿ずとのいく先も気になるし、シリーズ化されるのかな。 しゃばけシリーズは若い人にも時代モノの楽しさを広めたけど、この「まんまこと」も楽しみな シリーズとなってくれれば… あっ「ゆめつげ」もシリーズになって欲しかったなぁ。 やっぱ妖や不思議系のほうが好きなのかも。 |
症例A
新しくS病院に赴任してきた精神科医の榊は17歳の少女亜左美を担当する。 前任者の診断では「分裂症」となっていたが、榊は「境界例」ではないかと疑う。 その診断をめぐって臨床心理士広瀬由紀は、異論を唱えてくる。 そして由紀はある精神分析医に会って欲しいと榊に言ってくる… 面白かったです! いろいろな要素が組み合わさりボリュームがあるのに飽きることがなかったです。 主人公である榊には、過去の患者で苦い経験があり同じ過ちを繰り返してはいけないと 亜左美には慎重に接するのです。 この亜左美という少女もクセ者。人を気まぐれで振り回すし、同性から見たらイヤなタイプなのです。 これに広瀬由紀がどう絡んでくるんだと思ったら、そうなの!?という展開で驚かされるのですが その説明役となる精神分析医岐戸医師の登場で、安っぽい展開にはならないのです。 精神を患う病気のことも非常に詳しくわかりやすい。ガリバー旅行記の話も知らなかった。 今では「分裂病」とは言わないそうですがあえてそのまま使っているそうです。 「多重人格」も北米だけで、それ以外の地域では疑問視されてることも知らなかった。 なんだか知らないことが多いのだなと実感。 精神病院での話と東京の博物館での疑惑が交互に出てきて、いったいどこで繋がってくるんだと思っていたら ミステリーらしく繋がりました。 この部分はいるのか?とも思ったのですが、以前読んだ「汚名」も戦中戦後が扱われていたし 戦争によって何かが狂わされた人々のことを伝えたかったのではと、思いなおしました。 最後がちょっと不満なのです。もうちょっと先まで進んで欲しかった。 亜左美はこれからどうなるんだろう…知りたいしいい方向に進んで欲しいです。 気になる終わり方はモヤっとします…でも面白かった。 |
再婚生活
HPやネッ友さんの話で山本文緒さんが、体調を崩されたことは知っていました。 山本作品は好きなのですが、出会ってからは新刊は少ない。 早く新しい話を読みたいと待っていました。今思えば読者って勝手ですよね。 久々の新刊は王子(旦那様をこう呼ぶ)との再婚生活が綴られた日記エッセイ。 それは甘いものではなく、山本さんのうつ病の闘病の日々が綴られたものでした。 最初の入院から4ケ月後から始まった連載なのですが、決してよくなったわけではなく 気持ちの不安定さに読んでいて痛々しくなるほどでした。 いろいろなことが書かれている日記もあれば、箇条書きのような日記もある。 本当に日々が綴られている… そんな山本さんを支えているのが王子。 朝ごはんを作ってくれたり掃除してくれたりと、会話や詳しい出来事は書いてないのですが その心使いが程よく素敵な旦那様です。 でも辛かったんだろうな、王子も。 秘書マシマロさんの献身も素晴らしい。 最後に「してあげられること」の嬉しさに触れていて、なんでもないことだけど これってすごく大事なことなんだなとじーんとしてしまいました。 人は誰かに支えられているし支えてもいる。 そんなことを考えながら、読み終えたのでした… 文緒さん、ありがとうございます。 |
骸の爪
ホラー作家の道尾は、取材のために訪れた瑞祥房で、口を開けて笑う千手観音と頭から血を流す仏像を見た。話を聞いた真備は、早速瑞祥房へ向かう-。20年の時を超え彷徨う死者の怨念に真備が挑む、シリーズ第2弾。 内容(「MARC」データベースより) ミステリーの謎解きというのは、難しいものだなと思いました。 つじつまあわせになってはいけないし、納得できないものであってもいけない。 多少は許せるとは思うのですが… 小出しにヒントを出してるならこちらにも推理を楽しむこともできる。 2時間サスペンスドラマのように、こいつが犯人よ。と見抜く楽しみもある。 さて、どうだか。 「向日葵の咲かない夏」を読んだときは、奇想天外な結末にやられた!という思いが強く、 騙されたことにも腹の立つこともなくかえって面白かった。 だけど今作は…うーーーーん。 もっとおどろおどろしていたら、違ったかな。 やってることはおどろおどろしてるんだけど、結構サラっとしてるのよね。 期待しすぎたということもあるのですが、予備知識がなければもっと楽しめたかな。 でも仏所というあまり縁のない場所が舞台というのは、興味深かったです。 仏に携わる人たちにしては…欲が深かったような…それもまた人間なり。 |
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